ゴーン・ガール

映画のなかで登場人物たちが何度も問いかける「本当のことを言ってほしい」は、夫婦とか、兄弟とか、社会とか、それぞれにそうであってほしい人として演じることを求められる世界のなかで、たしかなものを確認しようとする言葉だ。わたしたちは誰でもちょっと多重人格で、それぞれのコミュニティにぴったりの人として振る舞うことがある。でも、みんなと別れて家に帰れば素の自分になって、いわば陽の時間と影の時間でバランスが取れているから成り立っている。結婚はおろか同棲もしたことないからよくわからないんですけど、血の繋がってない誰かと一緒に暮らすことは、可能なんだろうかって思うこともある。それとも、影の時間をも一緒に過ごせるくらいの人と出会うことは、可能なんだろうか。ともあれ、この映画はそんな嘘だらけの最低な世界をどうやって脱出するか、脱出するにはどういう方法があるのか?という妄想の映画だ。そして脱出した先にも、同じように最低な世界が広がっていることがわかる映画でもある。じゃあ、世界とどうやって付き合うのか。そんな世界のなかで、果たして結婚は可能なのか、という映画でした。クリスマスの夜とかにアベックどもが間違って観てしまわないか心配です。 #映画

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