仮面のようなスポーツカーが、
その頃はまだその人の車に乗ったことがないはずだった。
だからどうしてこのフレーズを聴いてそれを想起したのかは思い出せない。たぶん、駐車場で愛しそうにそれを見上げるその人の顔が張り付いて、聴いた瞬間に「これだ」と思ったのだろう。
夜、あの坂を下る時には好んで「3」を、その中から「エイリアンズ」をかけることにしていた。上空に飛行機が飛んでいなくても、ひょっとしたら、あの、「仮面のようなスポーツカー」が、私の目の前に現れて「魔法をかけてみせ」てくれるかなという薄く都合のいい期待があった。
その人が笑いながら「助手席に荷物以外のものを乗せるのは久しぶり」だと言った時に、もっというと「いまからそこに行く」という報せが徒歩ではなく車でつけるという意味だった時に、ああこれが、と思ったのだった。なんて気持ち悪い話だろう。でもそうです。
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