フォックスキャッチャー

自分を必要としてくれるとうれしい、そういう誰もが持っている気持ち。母ちゃんに、世界に、認められたくて、なまじっか金があるだけにだんだん手段を選ばなくなっていく様子は狂気でしかないけど、その怖さは生まれたときから豪邸に住む財閥の御曹司じゃなくても、オリンピックで金メダルをとったって孤独で貧乏なレスリング選手にも同じ気持ちを感じてしまうところにある。承認欲求に取り憑かれて自分のために生きるふたりは、同じ画面にうつる、奥さんがいてかわいい子供がいて、家族を守りながら生きるレスリング選手の兄から比べると幼く見える。ヘリコプターでコカインをキメあいながら、自己催眠のように自分の肩書きを連呼するシーンはすごい。レスリングという競技も、一線を越えると人を殺してしまいそうな狂気を感じさせる瞬間が見えて怖い。おもしろかったけど、怖いし、もう観たくない。

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