麻婆カレー並

隣で、中国人か韓国人かどこかのアジアの人が、iPhone で喋りながら牛丼を食べている。日本語ではないから何を話しているのかわからないけど、どちらかというと喋るより聞いているほうの時間が長くて、その時間に牛丼を食べたり味噌汁を飲んでいる。その向こうから大きな声がして、厨房で店員が大盛りの注文を聞き逃したことについて激怒している。そんな店内のなかで、僕の目の前にある麻婆カレー並がうまい。キーマカレー仕立てな挽肉のゴロゴロ感と、大きな茄子、確かな辛さがうまい。この店内のなかで、麻婆カレー並だけが正しい。食べることは生きることだ。だから松屋の店内には生しかない。生しかない店内のなかで、牛を殺した、茄子を殺した、生きている僕たちが間違っていて、死んだ麻婆カレー並だけが正しい。僕はその正しさを学びたい。薄っぺらなスプーンで少しずつ口に運ぶ。正しさを体に入れていく。

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