2014/10/13

タイルは剥がれ、コンクリートは割れて穴が開いている。その割れ目から何かの水が湧きだして、雨が降ったわけでもないのに水びたしだ。ジプニーと呼ばれる後ろにドアのない乗り合いバスが、目に見えてまっくろな排気ガスを残して走り去っていく。車がとにかく多くて、常に渋滞して時間通りに辿り着かないし、いつもどこかでクラクションの音が鳴っている。貧富の差が激しくて、暗闇を見ると人が横たわっていて、寝ているのか死んでいるのかわからない。セブンイレブンのドアの前で子供たちがこちらを見つめている。店から出てきたところで、目が死んだまま、それが仕事であるように業務的に手を伸ばしてくる。看板は英語が多いけど、ハングルや中国語も目立つ。日本語もある。風俗店の前ではまずアンニョンハセヨ、そしてコンニチハ、またはシャチョウと言われて、僕たちの「先祖」がこの国で何をしてきたのか、そして僕たちの国の勢いが衰えていることを感じさせる。

地面に寝ている人や座っている人も多いけど、椅子に座っている人もいる。路肩の石に座っている人もいる。人がたくさんいる。みんな、なにをするわけでもなく、ただ座っている。酒を飲むわけでも、たばこを吸うわけでもない、話すわけでもなく、座って通りを見つめている。一体なにを考えているのかわからない。することがないのか、赤道に近いこの国はずっと暑いから、家にいるより涼しいんだろうか。日本人だったら、みんなスマートフォンを見ているのかもしれない。

例えば世界という言葉を言うとき、地球上の行ったことがない場所を指すイメージでいたけど、そしてそんな場所だって、どんな場所だって自分は暮らすことができると思っていたけど、無理だなと思った。自分には、日本の、しかも関東地方ぐらいしか「世界」はないのかもしれない。そんなことを考えていたら、僕たちが探していた四川料理の店に着いた。マニラの四川料理は、どれも全然辛くなかった。

130