2014/07/16

駐車場で、猫が寝転がって足を舐めている。その様子を、少し離れた場所から、ふたりの男女が立ったまま無言で見つめている。男はビニール袋の手提げを持っているから、ふたりは買い物をしてきた帰りなのかもしれない。ふたりはお互い手が届くか届かないかのような距離をとって、それでもただ黙って猫を見つめていることができるから、恋人なのかもしれない。猫は首輪をしているから、駐車場の横のクリーニング店で飼われている猫なのかもしれない。こんなふうに何かについて説明しようとして、自分の言葉がまったくの無力だということがわかる。

わたしたちは、わたしたちの体のかたちが似ているということが、たくさんの悩みを作っているのではないかと思う。わたしたちの体に、当然のように頭が2個あったり、性器が4つあったり、頭なのか性器なのかよくわらないものが首にあったりしたら良いのだと思う。頭なのか性器なのかよくわらないものが痛いとか言われても、なんかよくわからないから、誰かの痛みを理解してあげられそうな気がしてしまうといった事故がなくなる。わたしたちの優しさのようなものが、もし共感することから立ち上がっているのだとすれば、自分が自分を助ける延長に優しさがあるのではないか。頭が1こ手が2つ性器が1つで統一されているこんなにやさしい世界でも、あなたが何を考えているのかわからない。あなたのなかに自分を見出すことでしか優しくなんていられない。

ぼくは、僕の言葉がきっといつか自分を助けてくれるんじゃないかとすこしだけ期待していたけど、普通にそこにある現実はただリアルでいるだけで、ぼくも僕もおれも俺もわたしも私もあたしもアタシも関係なく、バカでいるのも関係なく、憂鬱でいるのも関係なく、愛されなくても関係なく、もちろん言葉も関係なくて、ぼくは、最近自分が怒りっぽくなってきたなと感じている。ぼくは、この星の、この国の、この街の、この部屋の、窓辺のベッドに座って、こんなふうにやっていることを、誰かに知ってほしいと思っている。というか、助けてほしいと思っている。(ぼくは|おれは|わたしは|あたしは)どうすれば幸せになれるんでしょうか?

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