ねぇ、
エクレアを買いにいこうよ。金曜日の夜の、12時を過ぎて食べたくなるようなエクレアとは、シュークリームみたいなやつじゃなくて、表面がまっくろにチョコで塗り固められているような、思い切り甘くてカロリーがすごそうな、できるだけ下品であるほうが好ましい。エクレアっていうより生クリームが食べたい。生クリームっていうより、食べてはいけないものを食べてしまいたい。だから、ねぇ、エクレアを買いにいこうよ。誰もいない商店街の道の真ん中を歩く。知らないあいだに雨が降って、知らないあいだに止んでいたみたいで、勝手に地面が濡れている、許しも得ないで。ここは、あたしの街なんだ。この街には3軒コンビニエンスストアがあって、ここからできるだけいちばん遠くのコンビニがファミリーマートで、ファミリーマートの店先には喫煙所があって、そこで毎朝数人の会社員のおっさんたちがたばこを吸っていて、その煙に包まれてから毎日会社へ向かう電車に乗っている、ということ。毎日会社へ向かう道と同じ道を、いまはエクレアを買うために歩いている、ということ。セブンイレブンとサンクスとファミリーマートだったら、いちばん下品そうなエクレアはファミリーマートにありそうな気がする、ということ。ファミリーマートの店頭には、シーチキンマヨネーズおにぎり8円引きと堂々と貼り紙がしてあって、8円。8円は大事だよなぁ。8円は大事だよなぁと思って、158円の、表面がまっくろにチョコで塗り固められているような、思い切り甘くてカロリーがすごそうな、できるだけ下品そうなエクレアを買うんだ。いちごの味がする甘い牛乳も買うんだ。たとえばこれから家に帰って、30秒で食べ終わってしまうとしても、ちいさなちいさな本当に小さくて些細な金曜日の夜への抵抗としての、ねぇ、エクレアを買いにいこうよ。