それ
昔のバイト先で昔ハマっていたものを借りた。昔のバイト先は運営会社が変わって制服も変わっていたし知り合いは誰も居ないようだったけど、いまさら見知った知り合いが居ようが居まいがどうでもいい。むしろ居ないほうが都合が良い。できたら過去にふれあいたくない。
大学のサークルはどうだ、積極的に連絡を取ってはつながりを保とうとしてくれる心優しき友人が一人二人居るからなんとかなんとなくつながってはいるが、この、つながりの時代で、たったの四年間一緒に過ごした人々を切るのはとてもたやすくやさしい。
たとえば爪や髪を切るように無痛とまではいかなくてもそれ相応に穏やかに切り捨ててゆける。そういえば昔、まだ制服を着ていたころ、学年を一つ登る度にアドレス帳の中身を消去していくような子供だった。
(もうふれあわないと決めて)データをまとめて削除するのはなかなか痛快で、でもだからこそ残るものがあると信じていた。わずかに。ほんとうにわずかになにものかが残ったけど、それだけだった。
学生時代にしていたどぎつい話の主人公が自分たちになっただけで、どんどんどんどん、棒倒しの砂山を分けるように一人になっていく。
…親友の。親友の結婚式でスピーチをするのが密かで細やかな願いだけど、それが終わったら次は長期的に何のために生きていこう。
ここの人々だって一度「過去」と、ふれいあいたくない過去と認識してしまえば、積極的に自らは連絡なんて取り合わないだろう。大学のサークルの心優しき友人のような素っ頓狂なお人好しが居れば別だけど、おそらく、過去に居た出入り業者の一人として認識され、記憶の彼方で、埃をかぶり、もう誰にも思い出されないだろう。
誰にも思い出されないだろう。予測と願い。
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