きのう見た菓子パンの感想

終バスにふたりは眠る紫の〈降りますランプ〉に取り囲まれて

という穂村弘の短歌が好きなんだけど、だからといって実際に「終バス」に乗って「降りますランプ」に取り囲まれながら「ふたり」が眠っていても、全然ロマンティックにならないと思う。短歌の言葉は読むための言葉としてあって、フォーマットのために説明が省略されているから成立しているところがあって、実際の「降りますランプ」や「ふたり」はどんな風にあるのか、そんな詳細なディテールは必要なくて、自分たちの想像のなかの「終バス」だからロマンティックに思えるんだろう。

きのうマームとジプシーと穂村弘の共作の公演を観て、穂村弘のテキストのなかで話される1袋8本入りのチョコチップが入った「菓子パン」が実際に舞台に登場して、青柳いづみがむさぼり食べるのを見た。でも、ここでは実物の「菓子パン」を目にしても、まったくロマンティックの強度は失われていないと思った。菓子パンの袋に何も印刷されていなかったからなのか、青柳いづみの演技がそうさせているのか、それ以前にここが舞台だからなのか。いろいろ理由はあると思うけど、文字の表現が現実に再現されても、きちんとロマンティックでいてくれることに、僕たちの普段の生活のなかでも何かの模倣でないロマンティックがたしかにあるように思えて、なんだか希望が持てたなあ。 #演劇

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