Apple Music で聴けるおすすめアイドル音楽 2015

自分のなかで今年のブームとしてアイドルの音楽をよく聴くようになったというのがあって、というのも今年は Apple Music が始まって音楽との接しかたがまったく変わってしまい、そして Apple Music はやたらアイドルの音楽が充実していたから、いままで聴くことがなかったアイドルの音楽に触れやすくなった。ここでは、今年 Apple Music でよく聴いたアイドルの音楽を紹介させていただきたいと思います。

バンドじゃないもん!

もともと「神聖かまってちゃん」のドラムの鈴姫みさこと、同じくドラムの金子沙織によるツインドラムの楽曲(!)からはじまった、私たちはバンドではないという否定から入る名前を持つアイドルグループ。その後メンバーの加入と脱退があって、2015年の現在は6人のちゃんとしたアイドルになってしまった。

音楽を聴いていると、そんな自分たちの出自から生まれてくるのか、よりアイドルらしくなるために、アイドル的な価値観(底抜けに明るくてテンションが高く、歌詞に整合性がなくネガティブでない)を踏襲して、「アイドルってなんだろう?」と問いつづけているように感じてしまう。どうしてアイドルをしなくちゃいけないんだろう。アイドルの先にはなにがあるんだろう。「君の笑顔で世界がやばい」の歌詞の最後の一節を引用したい。

夢は終わらない まだ諦めない 君と共に生きたい
どこまでも行こう 掴むぞ栄光
宇宙一僕らが幸せなんだもん!

BiSH

会社の人から「握手会に参加するためにたくさん買って余ったから」もらった CD を聴いて、はまってしまった。かつて BiS というアイドルグループがあったらしい… そして、そのマネージャー?をしていた渡辺さんという人が、新しくはじめたアイドルグループが BiSH というらしい。そのあたりの物語についてはよく知らないけど、とにかく音楽が良い。

ぱーぴらぴーぱぴっぴぱぴらぱ
ぴーぱらぴっぱぴっぴぱぴらぴ
ぱーぴらぴーぱぴっぴぱぴらぴろ
雑草がさっそうにぴらぴら

突然アホになる。歌詞に意味なんかない… PV もなんかうんこなのかなんなのかわからないけどとにかく全身を汚いなにかまみれになる映像だったりして、BiSH は「怖い」。そして、楽しい。

ゆるめるモ!

ニューウェーブの影響を受けた画期的なアイドルグループ。衣装もつなぎ姿で、POLYSICS や箱庭の室内楽とコラボレーションしている。

受難 UP TO 楽しい兆しだ
受難 UP TO 楽しい兆しだ
受難 UP TO 楽しい兆しだ
受難 UP TO 有り難い

歌詞はすべて小林愛という人が書いていて、苦しくなったら逃げろとか、とにかく生きろとか、がんばらないことをテーマにした、楽しい音楽とは裏腹な切実な言葉が載せられる。受難は楽しい兆しだからがんばって耐えろみたいな、修行僧みたいな歌…。

「いつかどこかで再び会える
偶然を待ちわびてる」
「いつかどこかで出会えたのなら
運命を信じたいよ」
「いつかどこかで出会えたのなら」じゃない
今、電話してこい!

厳しい!

Tomato n Pine

2012年に解散したアイドルらしい。2015年のいま聴きはじめたから沿革はまったく知らないけど、ポップで、ソウルで、ファンクで、ロックで、でもアイドルで、とにかくすごく良い曲だなと思いました。

「ジングルガール上位時代」っていう言葉を見たときに目眩がした。こんなタイトル、どうやって思いつくんだろう。ジングルガールも、上位時代も、自分の語彙にない言葉だ。あと、この時代から SNS について言及しているのもすごい。

ろっぎんあう えん ろっぎんあう
ライフログきらきら☆プロデュース
なんでもない ホントじゃない なにも
ろっけんばん えん ろっけんばん
ワタシ私を殺しテク
ROCK AND BONCE AND ROCK AND BOUNCE
星と「いいね!」の武器商人

(「そして寝る間もなくソリチュード」というタイトルの曲の歌詞より)

tengal6

ヒップホップアイドルユニットということで、ラップをするアイドル。結成するときにあの TENGA に協賛してもらった経緯で名前に tenga が入っているけど、別に音楽にはまったく関係ないのがすごい(現在は lyrical school に名前を変更)。

アイドルだから恋についても語るけど、ヒップホップだから友達の重要性についても言及するのが特徴だ。10代とか20代前半の、ささやかに救われた一瞬を、こうやって改めて真空パックに保存しておくことが、アイドルにはできるんだと思う。

とりあえずお疲れー じゃあ乾杯!
それじゃ何頼もっか?やっぱり
まずはサラダそれにバーニャカウダー
そういえば 調子はどう? あれから
今度デートなの 何着ようかな
美容院で髪切ろうかな
それにやっちゃおかなヘアカラー
まずは片付けなって部屋から
それよりそのネイルどこでやったの?
新しいサロン 駅前にあったの
その靴いいなー かなりかわいい
えー見せて あ ほんとかわいいー
ここのチーズフォンデュうまー
っていうかここだけの話
えっなになに?
楽しい時間はあっというま
そうだ 来年 旅行しようよ

LinQ

福岡を拠点に活動する九州のご当地アイドル(スコープが広い)。27人もいるらしい。グループ名は「Love in 九州」の略とのこと。

きみがもしも泣いたなら 隣にいるよ
きみがもしも挫けたら 守ってあげる
きみがもしも笑ったら 何より嬉しい
たまにちょっとへこんじゃう
そんな時には
おっきな声で歌ってみよーよ!

アイドルは触れられないところにいる存在であるにも関わらず、僕たちがアイドルに求めているのは、いつもそばに寄り添ってくれているような、いつも見守ってくれているような、背後霊のようなものなのかもしれない。

夢みるアドレセンス

アドレセンスとは、思春期のこと。その通り、10代の女の子たちが、夏について、恋について、歌っている。

そんな底抜けに明るい曲を、10代でない僕たちが、静かに聴いている。ここに、僕はアイドルを見る。このアイドルと僕たちの関係性こそ、アイドルを聴く僕たちもまた、アイドルを構成する要素だと。いままで僕は、アイドルなんか、いかがわしいものなんじゃないかと思っていた。でも、もしかすると、性を超えて、世代を超えて、同じものに触れられる瞬間があるようなものなのかもしれないと、だんだん思うようになった。

柴田聡子

この流れで柴田聡子も紹介したい。柴田聡子は、アイドルというよりは女性シンガーである。

「オリンピックなんてなくなったらいいのにね」というつぶやきが L チャンネルから R チャンネルへ流れるとき、べつに僕はオリンピックがなくなったらいいとか思ったことはないけど、なにか同じものに触れたような気がしたのだ。そして、ちょっと気持ちが楽になったのだ。

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