高橋源一郎「ニッポンの小説」
あとがきの、この一文に驚いた。
ぼくは、遠くにある異なったものを結びつけるのが、『文学』の仕事だから、と答えた。『あの日』と自分に、どんな関係があるのかわからないのだとしたら、『あの日』と『文学』に、どんな関係があるのかわからないのだとしたら、その関係を探ることが、そこに関係を作りだすことが、ぼくたちの仕事だから、と答えたのだった。
ここでの『文学』にあたることが、僕は『インターネット』だと考えていたのだ。
いや、僕が勝手に『詩』と呼んでいるものかもしれないし、大学生のときに出会った括弧つきの『映画』かもしれないし、かつて憧れていた『現代美術』かもしれない、と思った。
そして、今回の発見についても、だからどうしたというか、とくに成算があるわけではない。
成算がある、どころか、そもそも、なにについて書こうとしているのか、それすら、はっきりとはわからない。
そこの、その部分に、なにか重要なものが隠されているのではないか、とずっと思ってきた。ただ、それだけだ。
ただ、それだけで、また、一から始めてみる。そして、うまくいけば、最後には、どこかにたどり着けるかもしれない。
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